好きなったらどうしましょう(作曲;町あかり、作詞;姫乃たま)

姫乃たまさんのアルバム『もしもし、今日はどうだった』の1曲。ライブで披露される機会は多くないのだけど、個人的にはアルバムで一番好きな曲です。

一聴するとお気楽世界にも聞こえます。町あかりさん作曲だし、ラテンなリズムだし、南の島で二人楽しく過ごすという歌詞の語感も。しかしちゃんと聴くと「嫌われてしまったらどうしましょう」から始まる姫乃たま節。相反する町さん&姫乃さんが混じっていい温度の歌になってるように思われます。極楽生活の描写も穏やかで優しく、姫乃さんのボーカルがよれたりかすれたりするところも絶妙に可愛らしく響きます。

「あなたを好きでいるように 私を好きになりましょう」
終盤にこのフレーズが来て胸に響きます。この部分の歌詞、「あなた」に対しては「好きでいましょう」、「私」に対しては「好きになりましょう」なんですね。

それと、サビのメロディが繰り返し感のない一続きのフレーズになっていて、メロディの必然性が美しい。

映画『カメラx万年筆=夏』(監督 ALi(anttkc))で使用されていて、その内容を踏まえると一層切なく響く一面もあります。

20190720 YBSラジオ姫乃たまさんのメッセージ

2019年7月20日に姫乃たまさんは里咲りささんとラジオに出演されました。山梨のYBSラジオ「909 Music Hourz」という番組。

アナウンサーさんをホストに2時間のうち前半はお二人についてのトーク。後半はお悩み相談コーナーでした。相談者の一人にアイドル志望の大学生の女性がいらっしゃって、主に上京関連方面の相談をされていました。

さすがのお二人(かたや地下アイドル本の著者で、かたや運営経験者社長)、興味深く実用的な回答を楽しく聞きました。特に、事務所の良しあしを見分けるポイントなんかは、具体的でめっちゃ役立ちそう。

余談ですが、この日は姫乃さんが「給料がブラックボックスになってるところはよくない」旨、里咲さんが契約書の重要性に触れていて、この翌日に吉本興業の騒動が起こるのですが、やはりお二人は大切なこと言ってたんだなあと感心。

さて、相談の最後に姫乃さんが選曲した曲を贈るという趣向がありました。贈られたのはOK?NO!!の『Birthday / 誕生日おめでとう』。曲が流れたあとに次のようなメッセージが添えられました。だいたい以下のような感じです。

 

アイドルになるって生まれ変わるような感覚があるかもしれないけど、ぜんぜんそんなことはなくて誕生日1回迎えたぐらいの、昨日までの自分とは違うけど、でも自分でいるってことなので。
きっとアイドルになれるけど、アイドルになったあとも自分らしく頑張れない時がでてきちゃうと思うから。
そういう時に、自分のそのままの姿を受け入れてくれる人が絶対世界にはいるので、誰でも主役になれるんだよっということを覚えておいて、楽しくアイドル活動をやっていってほしい。

 

アイドル志望じゃないけど胸に染みます。優しくて思慮深く、実際のところ現実的な厳しさに触れつつ、そこに希望があること、何周も先回りして落っこちないようにキャッチしてくれる言葉。

 

相談者さんはまだピンとこないかもしれないし、ひょっとしたらこの言葉だけでは忘れちゃうかもしれないけど、この曲をライブラリに入れておいてくれたら、何年かして思い出せるんじゃないか。

 

このメッセージの考え方自体は姫乃さんが繰り返し語ってきたことで、姫乃さん自身が地下アイドル人生の中でつかみ取った言葉だと思う。そしてこの言葉が心を打つのなら、それは姫乃さんの言葉が普遍的に人生の問題への回答であることの証左に他ならない。

20190630 姫乃たま at SPA!フェス31「まんきつpresents 私が愛したサウナ」

サウナがテーマという狭いイベントですが、登壇者のみなさんが話し上手だったりサウナ愛が極まっていたりして、楽しかった。

断片的なことを覚え書きとして書きます。

 

アレ

女5人集めたからとりあえず性の対象として扱っとけ。みんなもそれが好きなんでしょ?

みたいなノリがあって不愉快でしたね。ひょっとしたら「SPA!はそういう雑誌だよ」みたいな話があるのかもしれないけど、雑誌の読者だけじゃなくて、登壇者のファンやサウナ好きが観に来てたと思うので、クソだなーと思いました。登壇者の方が嫌な思いしてたら悲しいです。(金輪際エロい目で見るな、という意味ではなく、文脈が違うんじゃない?という話です。)

 

特殊スキル

司会のサウナーヨモギダさんは、あらゆるサウナについて的確なコメントができるすごい人でした。と言ってもバリバリ仕切るタイプでもないので、姫乃さんが補助的に隙間を埋めたり話題を振ったりしていて、やっぱりこの人はスキル高!と感じ入りましたね。

 

イベントはお題への各登壇者の記入式回答をベースに進みました。以下、姫乃さんの回答です。

お題「サウナのこういうところが好き」

何もできないところ。えらい人もえらくない人も平等になれる現代の茶室……。

無防備な裸だから平等になれるとのこと。会場に納得の空気が流れます。しかしこの後「サウナの主(ぬし)」という平等でない話題に移行して、「マットそこだよ」とダミ声で主の模写をする姫乃氏よかった。

 

お題「自己流サウナの入り方」

普通です。
サウナも水風呂も死ぬんじゃないかと思う限界まで入って、外気浴しながら心臓と血管がポンプみたいに収縮するのを感じます。

回答は名前を伏せて発表されたのですが、これは姫乃さんだと確信しました。『いつくしい日々』という姫乃さんの曲を思い出しました。理由は、バスドラムが心臓の鼓動に聞こえる曲なのと、トリップ感があるからですね。

 

サウナ禁止 

姫乃「ドラッグだと思いながら入ってる。禁止にならないといいですね(笑)」
ヨモギダ「実際に(中世に?)ヨーロッパで禁止された時代があったそうですよ。」
姫乃「宗教とか洗脳に近いので禁止されるのはわかる。『宇宙』ってなるじゃないですか。」

 

信濃
岩盤浴について

姫乃「岩盤浴は服着ているせいか若干教室と同じヒエラルキーを感じる。」

登壇者の皆さんはピンとこない ようでしたが、何となくうっすらとわかる気もする。前段の「裸だから平等」という発言とつながっているのですね。

 

その他

その他では、まんきつ「トレンチコードに裸でサウナに行ってみたい」これはめっちゃ笑いました。「家から無停止でサウナに入ると効く(清水みさとさん談)」の実践という理由がちゃんとあるのだけど(笑)。

 

元が取れそうな抽選プレゼントをいただきました。
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下北沢サウンドクルージング '19 (2019/05/2)

この日はほかに用事もあったりして、まったり回りました。

諭吉佳作/men

「優れた曲を書く人」というイメージが先行していたんだけど、シンガーだ!(当たり前)と気づかされた。ライブの良い感じがあると思いました。

竹内アンナ

よく知らないで観たのですが、よかった。スリーピースバンドっぽい。ベースの人調べたけど名村武という方であってるかな。いい音だったなあ。「Sweet Child O' Mine」やってたので、おっさんとしては喜んだ。

PENs+

割とポップな印象ある~ぐらいの曖昧な感じで観たのですが、それだけでなく楽器も面白いし、サービス精神満点のギターが楽しいし、よかったな。あと、メンバー本気で仲良さそうなMCもよかった。

AAAMYYY

先にアルバム聞いてて好きで来たんだけど、音源よりはるかにレイドバックしたボーカルにびっくりしつつ、必然的に大きく乗る観客たち。ゆらゆらして楽しい。

 

こんな感じでした。

『大人になっても恋をする』(姫乃たま『パノラマ街道まっしぐら』感想)

姫乃たまさんのアルバム『パノラマ街道まっしぐら』が大好きなので、感想を少しずつでも世に出してゆきたいと思い、1曲ずつ書いてみることにしました。

『大人になっても恋をする』(作詞:姫乃たま 作曲・編曲:川辺 素)

「ドライブミュージック」「東京の夜景」「ワイングラス」

さて、冒頭から散りばめられる単語がイケイケに大人です。一方で、音楽性や歌唱は穏やかで素直なんですよね。そして、歌が進むにしたがって言葉の世界と音の世界が溶け合って聞こえてきます。

このように落ち着いて恋の歌が歌えるのは確かに大人の心持ちだなあと思うのです。背伸びしてたころを懐かしむぐらいになっても、やっぱり恋をする。

 

「苦い初恋 甘い不倫」

(どうでもいいですが、最初「甘いプリン」かと思ってた。)
この歌詞を姫乃さんがライブで逆に「甘い初恋 苦い不倫」と歌ってしまったことがありました。「それじゃ普通だ」って後から笑ってたそうです。

しかし、こうやって見てるとどっちが普通なのかわからなくなります。初恋はだいたいうまくいかないし、不倫してる人は楽しそう、そんなイメージもあります。この辺の感覚でどういう青春時代を送ったかバレる。

昔の人は言いました……。「青春時代の真ん中は 胸に棘さすことばかり」(青春時代/森田公一

 

「大人になる」

これを説明するのは無粋な気もするのですが、アルバムリリース時には「大人になる」という言葉に「アイドル/アイドルファンから脱却する」という意味が付与されていました。

(参考文献↓)

www.cdjournal.com

あえてその文脈で「大人になっても恋をする」というフレーズを解釈すると、どういう意味になるのでしょうか。……。と、問いを立ててみたもののよくわからん、すみません。

 

最後に、声の話。

この曲は、アルバムの中でも姫乃さんの声がひときわ自然に響く一曲だと感じています。もともと声を張らない方ですが、その中でも話し声に近い歌声で、しみじみ素敵な声だと思うのでした。

2019年2月 劇団アカズノマ「夜曲」(石塚朱莉がツトムのこと)

今年2月に劇団アカズノマの公演「夜曲」を観に行きました。

前提

  • 演劇はあまり知りません。
  • 音楽をよく聞きます。
  • 石塚朱莉さんの薄いファンです。
  • 石塚さんの(NMB48の)公演とかコンサートはあまり観たことがない。
  • これまでに上演された「夜曲」も観たことはありません。


この記事ではいちばん大きな感想を、つまり、女性である石塚さんが青年男性である「ツトム」役を演じた意味について考えたことを書きます。(よく知らないので浅薄で恥ずかしいかもしれないけど。)

 

もともと「夜曲」は1986年に初演されて以来、いろいろなキャストで上演されてきた名作だそうです。女性がツトムを演じるのは初めてっぽいです。

石塚さんのツトムは、ひょろっと細くて手足が長くて、それがコミカル。そして、早口で(男性にしては)声が高くて、何もしなくても全体的に軽くて薄い。まあ、現代っ子です。対するのは、武士組(便宜的にこう呼びます)。彼らは700年前の人たちで、特に十五や虎清は武士だ。ツトムと武士組の対比がこの物語の重要な軸で、それを表現するのに、女性でありつつその気になれば華奢な青年のようにも見せられて、お調子者の石塚さんが最適だったのだろうと思うのです。(普通の男性 対 ゴッツイ男性というストレートな表現もできるでしょうけど。)

ツトムと武士組のコントラストは、容姿だけでなく人物描写にも及びます。武士組は各々が重厚なバックグラウンドを持っています。過酷な運命にさらされていたり、強い思いを抱いていたり。序盤からずっと物語を引っ張るのは武士組で、ツトムは右往左往するばかり。そればかりか、結局、ツトムのことはほとんど語られません。家族は?恋人は?仕事は?どんな子供時代を過ごしたの?ただ、放火が好きとしか紹介されない。そんな主人公を観客はどう理解して、思い入れればよいのでしょうか。

ただ、ふと気づく瞬間がありました。あれ?武士組じゃなくてツトムが俺なんじゃないかな?

だいたい私たちは何にもないですよね。同じじゃん。それに、ツトムは何にもないから、そこに自分を投影できるとも言える。男なのか女なのかすら曖昧だし。

重厚な武士組に対する軽薄なツトムという構造自体が物語なのだと思います。

そんな中、ツトムは何もせずに終わるのだろうか。十五が「正義とはこの手を血で汚すことだ」と慟哭するシーンは、クライマックスと言っていい。そして、この物語の重要な側面の一つが、ツトムと十五の友情物語である。つまり、十五の言葉はツトムを動かした。サヨに背中を押されて「蚊帳の外」で傍観者だったツトムがこの物語に終止符を打った。彼らしい方法で大切なものたちを葬り去って、だからこそラストのツトムは清々しくあるのだと思う。

ひょろひょろの細い脚で彼の人生を歩き出そうとするツトムに、石塚さん自身を重ね合わせてしまい、そのようすを思い浮かべると泣けてしまう。(ファンだからね……。)ツトムの未来に幸いがありますように。

(その他の感想も気が向いたら書きます。ジェンダーのこととか。)

CROSSING CARNIVAL '19

この日はこんな感じでした。

崎山蒼志 feat.君島大空
Dos Monos
Nyantora
パソコン音楽クラブ feat.長谷川白紙
Emerald(フィッシュマンズ・トリビュートセット with 木暮晋也、HAKASE-SUN)ゲスト:曽我部恵一、崎山蒼志
ミツメ
Spangle call Lilli line feat.ナカコー

 

長谷川白紙さんが出てきたときはテンション上がった。立ってキーボードをわしわし弾きながら歌う姿かっこいい。

SCLL は何年越しの初ライブだろう。じゅう何年?リハだけ「E」をやってくれたん。嬉しい。

それほどわざわざ回ったわけではないのですが、裏テーマ「姫乃たま」みたいな日です。1日のサーキットにこれだけ関わりのある人が出演してること自体不思議ではあります。

  • 君島大空(楽曲提供者)
  • Dos Monos(MV出演)
  • 長谷川白紙(楽曲提供者、ライブ出演者)
  • ミツメ(楽曲提供者)

この日の感想を書いたメモなくしたので、このへんで。

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